予告編で観た時に、たった数分の映像とコメントと役者の表情だけで涙が出たので観たいと思った映画。
中国の映画で舞台は農村、おそらくちょっと前ぐらいの時代。貧農の家の男と女が厄介払いの様に結婚させられ、その女は障害を持っており、左手足は思うように動かず、いつもお漏らしをしてしまい、子供も産めない、という何十苦。男は朴訥で心優しく働く事に真面目な人。
真冬に結婚して次の冬を迎える頃までの約1年間の二人の物語り。ほとんど会話のない中でお互いの心の通じ合いや思いやりが時間を経て深まっていき、唐突に別れが来てしまう。
男の所持しているものはロバ一頭のみ。結婚当初は家族の家のボロ空き家に住んでおり、真冬なので農作業はできず、ロバでの運搬で生活していたが、政府の空き家解体政策で空き家を壊すとお金が出るとの事でムゲに追い出され、別のボロ屋を借りて、そこを拠点として麦生産を中心とした農業を始める。女の身体は思う様に動かないので、気を使いながら一緒に作業をする。農作業のかたわら、土からレンガを作りそのレンガで立派な家を建てていく様に、ホンマかいなって思った。たった一人で数ヶ月でゼロから家を建てるってできるものなのか。それはともかく、自分の家を持ち、作物も麦を始め、トウモロコシ、ジャガイモなどの収穫があり、近所の人から卵を借りて、段ボールに電球を入れてヒヨコを育て鶏に成長させ、ブタも飼うようになり、これから幸せになろうとする矢先、突然別れが来るのである。余りにも唐突に訪れるので、涙も出ず、えーって感じでその後を観ることになる。
この二人の生活はほとんどが労働であるのだが、時々親戚のうちだろう所でテレビを見ているシーンとか、ヒヨコを孵す所のシーンや、題名にある小さき麦の花、麦を6粒手に花の形に押さえつけて跡をつけ、「この印があれば見失わない」というセリフ、オシャレなど到底できない様な環境で唯一の行為、こう言った素朴なシーンが涙を誘った。
農作業シーンとか家を作っているシーンとか、前に読んで感銘を受けている「弥勒」って言う本を思い出した。
以下ネタバレ。
別れって女が死んでしまうのであるが、その後の男の行動、せっかく収穫した作物や家畜は全て売り、ロバは野に放ち、作った家は取り壊し、その後ベッドの上で生前女が作ってくれた麦の藁でつくった小さなロバの人形を手にして、そこがズームアップして、手にした人形の藁の髭の部分がスーッと持ち上がってゆっくり萎れていく、絶対男は命をたった状況を写すのである。が最後画面本人は出てこないが、親戚の言葉だけで、都会で暮らす決心をした事を伝えるのである。実際は?っ言う所での終劇。
結構考えさせる映画であった。